こんにちは、茶子です。
東京の朝の通勤ラッシュを緩和するための施策として、時差Biz(時差ビズ)が始まりましたね!
東京都の予算で派手なテレビCMを流していますが、時差Bizは本当に東京の通勤ラッシュを解消することが出来るのでしょうか?
残念ながら、時差Bizの効果には大いに疑問が残ります。
なぜなら、時差Bizの実施期間がわずか1ヶ月と限定的であり、継続的な効果を得るにはほど遠いからです。
今回は、時差Bizとは何か? そして、そのメリットや解決すべき3つの条件をご紹介します。
- 2020.02.22 坂本竜馬のCM動画のリンク切れを修正
- 2019.08.17 都営交通2019夏の時差Bizキャンペーンが始まりました!
- 2019.01.21 冬の時差Bizが始まりました!
- 2018.08.07 時差ビズライナー・努力しているのは交通機関だけ?を追加
「テレワーク(リモートワーク)」に関する記事はこちらです。
Table of Contents
時差Bizとは?
時差Bizとは、東京都が主催する「通勤時間をずらし、東京の通勤ラッシュを回避する働き方改革」の一つです。
昨年は320社の企業・団体が参加しました。
時差Bizは、平成29年、30年と2回開催されており、平成元年(2019年)は3回目の開催となります。
さらに平成30年からは冬季(2019年1月下旬~2週間程度)も開催されるなど、時差Bizへの認知度は年々高まっているようです。
都営交通2019夏の時差Bizキャンペーンが2019年7月22日から9月6日の期間、開催中です。
具体的には何をするの?
では、時差Bizとはいったいどのようなシステムなのか見てみましょう。
まず、時差通勤に賛同する企業・団体は、時差Bizのウェブサイトで参加を表明します。
そして、少なくとも時差Bizの開催期間中の10日間に、対象部門の社員・職員に対して時差通勤を可能とする制度を作ります。
とはいえ、勤務制度の改定には時間がかかるため、時差Bizのために制度を整備するのは時間的に厳しいかもしれません。
恐らく、すでにフレックスタイムなどの時差勤務制度を整備している企業や団体が時差Bizに参加しているというのが、実情でしょう。

時差Biz参加企業・団体のメリットとは?
時差Bizに参加する企業・団体のメリットとは何でしょう?
本来の趣旨としては「従業員の働く意欲や生産性の向上」が目的となりますが、時差Bizに参加しただけでは、それは達成できません。
実際に時差Bizのパンフレットをみてみました。昨年の時差Biz参加企業・団体のアンケート結果が掲載されています。
ここで、驚くことに、時差Bizへの参加メリットとして一番に挙げられていたのは・・・「時差BizのHPに自社名が掲載されることでPRにつながった」というものでした。
こちらが、昨年の時差Bizの参加効果です。
- 41% 社名がHPに掲載されPRになった
- 36% 働き方改革などと一緒に取り組めた
- 31% 社員からの評価が向上した
2位の「働き方改革などと一緒に取り組めた」というのは、時差Biz参加の企業・団体のうち36%が、既に「働き方改革」を実施していることを意味します。その意味では、時差Bizは「働き方改革」の啓蒙にも一役買っているということが言えるかと思います。
3位の「社員からの評価が向上した」も良いですね。
しかし問題は、1位の「自社PR」41%。これは、少し残念なアンケート結果です。
実際に時差Biz 参加企業の一覧を見てみても、大企業がすでに実施している自社の「働き方改革」施策をアピールしている他は、従業員100名以下の中小企業の名前が目立ちます。
つまり彼らにとって、東京都が主催するウェブサイトからリンクを貼られることでPRになるという期待からの参加表明なのでしょう。
従業員・職員へのメリット
それでは、時差Bizの従業員や職員への具体的な効果はどの程度あるのでしょうか?
たとえ、企業や団体が先進的な働き方改革の取り組みについてPRできたとしても、そこで働く従業員や職員にとってのメリットがなければ、何のための働き方改革か分かりません。
この従業員や職員への直接的なメリットという観点から考えたとき、時差Bizへの参加効果は「働き方改革の必要性」について「気づき」を得るための1つのきっかけであり、時差Bizが従業員や職員にもたらす効果は、まだまだ限定的といえるでしょう。
一方、当初は時差Bizへの参加がPR目的だったとしても、それにより「シフト勤務」など、より柔軟的な働き方が新たに実現できたとしたら、従業員・職員の直接的なメリットにつながるといえます。
詳しくは「東京の通勤ラッシュを解消するための3条件とは?」の章をみてね。
時差ビズライナー・努力しているのは交通機関だけ?
実は時差Bizに唯一?全面協力している人達がいます。
それは、東京の鉄道会社です。
東京の鉄道会社は、時差Bizに協力するため、ラッシュアワーの電車利用を抑制するシステムをつくりました。具体的には、朝早くの電車を利用する乗客に対して、プレゼントと引き替えられるポイントを付与したのです(以下)。
- 田園都市線:時差Bizライナー
- 東横線:時差Biz特急
- 東京メトロ:時差Bizトレイン
このシステム自体は、素晴らしいと思います。残念ながら、1つの問題を除いては・・
それは、時差Bizの実施期間が短すぎるということ!
2018年夏季の時差Bizでは 田園都市線、東横線そして東京メトロも、9日間程度のみの運行でした。
時差Bizの効果はあるの?評判は?
次に、時差Bizの費用などについても少し見ていきたいと思います。
東京都都市整備局によると、平成30年度の時差Bizの関連予算は年間9000万円だそうです。東京都⼀般会計の予算が7兆460億円ということですから、東京都の事業としてはそれほど突出しているというわけではありません。
ただ気になるのがこれら予算の使い道ですね。見えている範囲では、以下のものが含まれると思われます。
- リーフレットの企画・作成・配布
- TV CM製作費・宣伝費
- 時差Biz Hp(Webサイト)の規格・政策・運営費((株)アクセスヒューマネクストが受託)
実際にそれぞれの想定コストを見てみましょう。
リーフレットの作成費用
まずは、リーフレットの作成コストを見てみましょう。
今回東京都は、A4サイズ3ページ(2つ折り)のリーフレットを東京都内の駅に配布しています。私がみつけた昇降客数が中規模の駅ではリーフレットが100枚ほどラックで配布されていました。
東京都内の駅の数が654か所(ジョルダン調べ)ということですから、リーフレットの配布数を仮に平均400部とすると、26万部・・・、ごろが悪いので30万部としておきましょう。
15万部のリーフレット(A4x両面三つ折り)の作成コストは、デザイン費用込みで43,000円~というウェブサイトがありました。他の業者のサイトでは、5万部のリーフレット印刷に11万円程度との記載がありました。
仮に30万部を印刷するとしたら、ざっくり値引きも込みで60万円、プラスデザイン料を5万円として65万円程度となります。
TV CM 宣伝費
TV CMなどの宣伝費にもお金がかかるでしょう。
坂本竜馬が出てくるCMを、東京のキー局の番組で何度か見かけました。
東京のキー局で、15秒のCMを放送すると40万円~80万円かかるそうです。(出典:テレビCMドットコム)
それほどTVを観ない私が、複数回見かけたということは、複数局の番組にあるのCMを流していたということは容易に想像できます。
だとすると、事業資金9000万円のほとんどは、広告宣伝費なのでは?と勘ぐってしまいます。
坂本龍馬は良いとして、ポスターの下の電車
— 京浜玉快特電鉄(けいひんぎょくかいとくでんてつ)@ナイセン団 (@KHG8780) June 29, 2018
絶 対 日 本 の 車 両 じ ゃ な い よ ね #時差Biz pic.twitter.com/q9TBP1AXDv
冴えないサラリーマンが朝意気消沈して会社に向かっているところに
— いっちょ (@DGO_gentyoken) July 22, 2018
坂本龍馬的な人が現れて
「時差bizするぜよ!!」
って言ったぐらいじゃ出勤時間遅らせられねぇんだよ舐めんな●すぞ。
って毎朝言いながら会社に向かう。 pic.twitter.com/ovWpWzU6YK
時差bizの広告に使用しているものが謎すぎる
— とまさら (@__TMSR__) July 11, 2018
坂本龍馬は高知の人だし、ポスターの下に写ってる車両はニューヨーク地下鉄だし
時差BizのCMに坂本龍馬を使う意図が本当に分からない
— たかと し (@Au7q) July 11, 2018
"東京都による時差通勤キャンペーン「時差Biz」に対しやりっぱなしという批判" https://t.co/Jg57SoM0NX #news #feedly
— masato sato (@maco_papa) July 11, 2018
これ東京なのに何故坂本龍馬なの?
バカじゃねぇの?
2018年に流されていた坂本龍馬のCMですが、評判が芳しくなかったのか、いまでは公式サイトからもYoutubeからも削除されています。
時差Biz事業の費用対効果は?
さて、上記でみてきたような費用をかけ行っている時差Bizですが、これで東京の通勤ラッシュは本当に改善できるのでしょうか?
また、本来の趣旨である「従業員の働く意欲や生産性の向上」への目的は達成できるのでしょうか?
結論から言うと、この制度だけではやはり、通勤ラッシュの緩和や生産性の向上への効果は限定的と言わざるを得ません。
少なくとも時差Bizによる経済効果を得るためには、3つの課題を解決する必要があります。
東京の通勤ラッシュを解消して、働く意欲や生産性を向上するための3つの課題とは?

実際に、東京の通勤ラッシュを解消し、従業員の働く意欲や生産性の向上を得るために、今後乗り越えるべき3つの課題をみていきましょう。
時差Biz 1か月の実験では制度の定着には不十分
時差Bizは時期限定イベントかつ、参加企業も794社と限られています。東京の企業数は約26万社(東京都産業労働局調べ)であり、時差Bizの参加企業は全体のわずか0.003%にしか過ぎないのです。制度の定着にはもっともっと多くの企業・団体が、時差Bizに賛同する必要があります。
欧米で導入されている夏季の就業時間を一時間前倒しする「サマータイム」制。時差Bizの導入例として「このサマータイム制と併せて行う」という話もあります。
しかし、実際、日本でも数年前にサマータイムの導入が話題になった時期がありましたが、その導入にはコンピューターシステム等の改修などに多額のコストがかかること、日本の国土は東西に長く日の出の時期が異なることなどから、いまだ制度の導入には至っていません。
これらのことから、制度の定着にはもっと多くの企業が賛同する必要があるが、1ヶ月ほどの期間ではなかなか厳しいという現実があります。
つまり、期間や参加企業数の点で、もっと徹底的に取り組む必要がありそうです。
OECD(経済協力開発機構)加盟30か国の中で、サマータイムを導入していないのは、日本、アイスランド、韓国だけなのだそうです。まだ明るいうちに就業時間を終えることで、終業後の経済活動が活発になるのだとか。サマータイムの導入により得られる経済波及効果は約9700億円にのぼるそうです。(社会経済生産性本部(現・日本生産性本部)平成16年試算)
早く出勤したら、早く帰ることを徹底する
他の社員・職員がおらず、電話もかかってこない早朝の時間帯は、集中的にアウトプットをするには最適です。出勤直後で、頭も疲れていないため、午後の一時間と比較すると早朝の一時間の生産性は2倍~3倍に匹敵するのではないでしょうか?
早朝に出勤することでのメリットは計り知れません。ただし、その分早く帰宅できることが前提です!
最悪なのは、早く来たのに、早く帰れないという事態です。単純に労働時間だけが増えてしまっては、時差通勤は従業員・職員にとって何のメリットもありません。
時差通勤で早く出勤しても、早く帰れない可能性が高い職種は営業職。
なぜなら、勤務時間を顧客に合わせる必要があるためです。自社だけがシフト勤務制度を策定していたとしても、顧客の勤務時間が従来と同じならば、どうしても合わせる必要がでてきます。そのため、より多くの企業がシフト勤務をしない限り、シフト勤務の対象はバックオフィス(間接部門、管理部門)などの一部の部門に限られてしまうことが多いでしょう。
遅く出勤する人達も増やさないとダメ

時差Bizのサイトをみていると、早く出勤して早く退社、そして午後を有効活用しようというイメージが先行している印象を受けます。
そもそも、通勤ラッシュの解消には通勤時間を分散する必要があるため、遅い時間帯に出勤する人たちも増やす必要があります。
一つのアイディアとしては、もっとも通勤電車の利用者が集中する8:00~9:30の時間帯の運賃を値上げするか、その前後の時間帯の運賃を値下げすることでしょうか。
もっとも、同一区間、同一運賃のルールを変えなければいけないなど、鉄道事業法をはじめ、運賃計算システムの更改が必要となるなど多大のコストがかかるため、その実現は困難でしょうが、早朝だけではなく、遅い時間帯に通勤する人たちを増やす施策を考える必要があります。
さいごに

時差Bizについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
素晴らしい試みではありますし一定の効果はあるかもしれません。しかし、まだまだ参加企業が足りないということ、制度として根付かせるには1ヶ月という実施期間では非常に短いということ、などの問題もあります。
そのため、時差Bizだけではなく、時差Bizと併せリモートワークなどの柔軟に働ける仕組みを定着させることが、働き方改革の成否を握るのではないかと思います。
従業員の働く意欲や生産性の向上のための働き方改革への取り組みが、更に進んでいくことを願います。